第22回 精神保健
問題69 精神疾患患者の治療や社会復帰に関する次の記述のうち、適切なものを一つ選びなさい。
1 社会生活技能訓練(SST)は、行動療法理論に基づいて行なわれる。
2 日常生活の管理は、患者に一任する。
3 長期入院治療後は保健所が介入しなければならない。
4 抗精神病薬は、統合失調症の症状があるときだけ服用する。
5 睡眠薬の内服は、病状を悪化させる。
解答1
1:○社会生活技能訓練は行動療法法理論に基づいた精神障害者の社会参加を促進するための認知行動療法の一つですから正解。
2:×地域で生活する精神障害者の日常生活の支援には精神障害者地域生活支援事業などがあり、そこで日常的な相談への対応や地域交流活動などが行われています。ですから患者に一任ということはありません。
3:×長期入院している人の退院を支援するために,2008年度から厚生労働省による地域移行支援事業がはじまりましたがこの事業は,地域移行推進員や地域体制整備コーディネーターを配置し,精神科病院と関係機関が連携をとりながら,精神障害を持つ人の地域生活への移行を推進するものです。したがって保健所が介入しなければならないというのは間違い。
4:×間違いです。主に統合失調症、躁状態の治療に用いられますが、それ以外にも幅広い精神疾患に使用されています。
5:×睡眠薬は一般的に一時的な不眠による寝つきが悪い、眠りが浅い症状の緩和に有効です。従って間違い
題70 睡眠障害に関する次の記述のうち、正しいものを一つ選びなさい。
1 睡眠障害の多くは遺伝性である。
2 早朝覚醒には、早い時間の就寝が有効である。
3 睡眠時無呼吸症候群は、痩せ型の人に多い。
4 不眠症は、うつ病では見られない。
5 加齢に伴い、不眠症は増加する。
解答5
1:×とある報道ニュースで「睡眠障害である「ナルコレプシー」に関係する遺伝子を東大研究チームが発見した。」などというのがありましたが、まだ十分に解明されたものではありません。睡眠障害の多くが遺伝性と言い切るところが間違い。
2:×朝早く目覚めてしまい、そのあと眠れないのが早朝覚醒です。だからといって早い時間の就寝が解決になるかというとそうではありません。その原因が鬱からくることもありますし体内時計が狂ってきていることも考えられるのでそれらの原因を明らかにして、それにあった対応をすることが大切だと思います。
3:×睡眠時無呼吸症候群には閉塞型睡眠時無呼吸症候群 や中枢型睡眠時無呼吸症候群などがありますが、閉塞型睡眠時無呼吸症候群は睡眠中の筋弛緩により舌根部や軟口蓋が下がり気道を閉塞することが主な原因となります。このタイプのかたは肥満者に多く減量などにより改善が必要になってきます。
4:×うつ病では初期の段階から不眠症状が現れることが多いです。特徴的なのは早朝覚醒があり眠りも浅くこと。また就寝後数時間で目が覚める中途覚醒も増えてきます。
5:○一般的に加齢とともに睡眠が浅くなり、中途覚醒や早朝覚醒が増加します。従って正解!
問題71 アルツハイマー型認知症に関する次の記述のうち、誤っているものを一つ選びなさい。
1 意識障害がある。
2 知能障害がある
3 見当識障害がある
4 後天的障害である。
5 認知症の原因として最多である。
解答1
1:×意識障害とは、物事を正しく理解することや、周囲の刺激に対する適切な反応が損なわれている状態のことですが、認知症の病態として定義されていないので頭に入れておいてください。
2:○下記参照
3:○下記参照
4:○後天性障害というのは、生まれたときから存在する先天性の障害と違い、生まれついたあとで脳に起きたさまざまな器質性障害によりおこるものです。
5:○間違えて覚えている方が多いので注意してください。970年代では、認知症の原因疾患別の有病率は、脳血管性認知症がおよそ60パーセントで、アルツハイマー型認知症の2倍程度を占めていましたが、その後、脳血管性認知症の有病率が下がる一方で、アルツハイマー型認知症が増加し、現在ではアルツハイマー型認知症が50〜60パーセント、脳血管性認知症が約30パーセントと逆転しています。
参考
アルツハイマー型認知症の症状は、記憶障害、見当識障害、学習の障害、注意の障害、空間認知機能、問題解決能力の障害、知能障害などがあります。重症度が増してくると摂食や着替え、意思疎通などもできなくなり最終的には寝たきりになります。脳血管認知症は段階的に進行(ある時点を境にはっきりと症状が悪化)しますがアルツハイマー型は徐々に進行します。また、アルツハイマー型は症状経過の途中で、被害妄想や幻覚が出現する場合や、暴言・暴力・徘徊・不潔行為などの問題行動が見られることもあります。
問題72 精神保健福祉制度に関する次の記述のうち、正しいものを一つ選びなさい。
1 精神障害者の入院医療では、医療保護入院の形態が最も多い。
2 精神障害者の通院医療では、患者の自己負担は発生しない。
3 精神保健福祉センターは、精神保健福祉に関する複雑又は困難な相談を扱う。
4 保健所における精神保健福祉相談では、来所相談が最も多い。
5 精神障害は障害者自立支援法の対象となっていない。
解答3
1:×精神障害者の入院医療では任意入院が圧倒的に多いです。従って間違い!
2:×指定医療機関において、精神疾患の継続的な通院医療を行う場合に、 医療費の一部が公費で負担されます。 自己負担は原則1割です。従って自己負担があるので間違い!
3:○下記の参照にあるように、精神保健福祉センターは精神保健福祉に関する複雑又は困難な相談を扱うことになっています。
4:×来所よりも電話による相談が最も多いです。
5:×障害者自立支援法は、障害の種類(身体障害・知的障害・精神障害)にかかわらず、共通の制度により福祉サービスや公費負担医療を提供するものです。従って精神障害者はこの法律の対象となっています。
参考
精神病患者の入院形態
任意入院→本人の同意のもと入院する形式です。
措置入院→患者の条件としては、症状が重く、場合によって自分や他人を傷つける恐れ、などがある場合の入院形式です。
緊急措置入院→必ず72時間以内にもう1名の精神保健指定医による診察が必要ですが、緊急性が高い場合に精神保健指定医が1名の診察でも入院が可能な制度です。
医療保護入院→本人の同意が取れないため任意入院ができず、症状が重くない場合の強制入院ですが保護者の同意が必要です。
応急保護入院→保護者の同意が必要ですが、すぐに得られない場合に行われる強制入院です。
精神保健福祉センター
精神保健福祉法のなかで次のように規定されています。
第6条 都道府県は、精神保健の向上及び精神障害者の福祉の増進を図るための機関(以下「精神保健福祉センター」という。)を置くものとする。
2 精神保健福祉センターは、次に掲げる業務を行うものとする。
1 精神保健及び精神障害者の福祉に関する知識の普及を図り、及び調査研究を行うこと。
2 精神保健及び精神障害者の福祉に関する相談及び指導のうち複雑又は困難なものを行うこと。
3 精神医療審査会の事務を行うこと。
4 第32条第3項及び第45条第1項の申請に対する決定に関する事務のうち専門的な知識及び
技術を必要とするものを行うこと。