第21回  老人・障害者の心理

 

問題41 老化に伴う心理と適応機制に関する次の組み合わせのうち、正しいものを一つ選びなさい。

1 他の人との間に生じる劣等感情を、優越感情で補おうとする。------補償
2 忍耐力や抑制がきかなくなることにより、人に依存する。-----------反動形成
3 新しいことをなるべく避けようとする。---------------------------投射
4 認めることのできない要求を、他人の中にある要求と考える。-------抑圧
5 自分の不安や緊張、葛藤などから逃げ出す事で安定を図る。-------合理化

解答 1
1:○下記の解説を参照してください。

2:×下記の解説を参照してください。

3:×下記の解説を参照してください。

4:×下記の解説を参照してください。

5:×下記の解説を参照してください。

 

解説 

適応機制とは人の心が緊張や不安などの不快な感情をやわらげ心理的に安定を保とうとする働きです。

この問題は過去に何度も出ていますからよく覚えておきましょう。

適応機制の種類には下記のようなものがあります

○代償(欲求が満たされない時、似かよった別のもので満足しようとする機制)

 補償⇒不得意な面を他の面でおぎなおうとすること

 昇華⇒ただちに実現できないことを社会的・文化的価値の高い活動で代償させる機制のこと

○同一化(自分にない名声や権威に自分を近づけることによって、自らの価値を高めようとする機制)

○合理化(一見もっともらしい理由をつけて、自分を正当化しようとする機制)

○逃避(直面している苦しくつらい現実から逃避することにより、一時的に心の安定を求める機制)

○抑圧(実現困難な欲求を心の中におさえこんでしまう機制)

○退行(たえがたい事態に直面したとき、発達の未熟な段階にあともどりして自分を守ろうとする機制)

○攻撃(他人や物を傷つけるなどして、欲求不満を解消しようとする機制で、直接的なものと間接的なものとがある)


問題42 実現見当織訓練(Reality Orientation:RO)に関する次の記述のうち、適切でないものを一つ選びなさい。

1 見当織障害を改善し、現実認識を高めることがねらいである。
2 24時間ROは、認知機能の障害が同じ程度のグループで行う。
3 名前や年齢、物の名前などの基本情報の反復学習を行う。
4 混乱や失敗に対しては、肯定的。受容的に対応する。
5 教室ROでは、ゲームを取り入れるなど参加者の相互交流を図る。

解答 2
1:○現実見当識訓練をリアリティ・オリエンテーション(Reality Orientation:RO)とカタカナ読みですることも多いですね。これは認知や見当識の障害のために現実から遊離してしまいそうな患者に対して、ただちに介入して現実的な対応ができるように働きかけていくことをいいます。この場合、患者の誤りをしかるようなことはせず、我慢強く、優しい態度で接することがたいせつとされています。

2:×24時間リアリティ・オリエンテーションでは、認知症高齢者とスタッフとの日常生活における基本的なコミュニケーションの中で、認知症高齢者に「自分は誰であるのか」「自分は現在どこにいるのか」「今はいったい何時か」といった事柄に対する現実認識の機会を提供します。なおこの訓練は個人の見当識の状態に応じてグループを分けて行なわれますがメンバーは3,4人から最大7,8人が適当だといわれています。

3:○その通りです。

4:○患者の誤りをしかるようなことはせず、我慢強く、優しい態度で接することがたいせつとされていますので正解!

5:○その通りです。

 

解説

この現実見当識訓練(Reality Orientation 以下RO)は時間、場所、人物に対する見当識障害を有する、中等度から重度の脳損傷老人に用いられるために1960年代半ばアラバマ州にある退役軍人管理局病院で開始されその後広く普及されたものです。

 

問題43 先天性視覚障害児の障害形態と発達に関する次の記述のうち、最も適切なものを一つ選びなさい。

1 1歳ごろの早期から教育訓練を始めないと、発達が停滞する。
2 バーバリズムとは、適切な概念やイメージの裏づけがないままに、言葉だけ学習してしまう状態のことをいう。
3 視覚的には理解できないが、2歳ごろから視覚障害であることは自覚している。
4 代償機能とは、聴覚がより発達し、視覚機能の情報収集力を超えていくことである。
5 身体を揺するなどの自己刺激的な行動をとるのは、外界からの刺激が過剰なためである。

解答 2
1:×年齢にそった発達課題をクリアしていくことで人は発達し成長するので、一歳くらいの早期から教育訓練をしなければいけないということはない。

2:○バーバリズムもよく過去問題にでてきます。是非このまま覚えてください。

3:×解説保留*********************************************************************************************************

4:×視覚障害での代償機能とはその障害のために聴覚がより発達することではなく触覚や聴覚などの他の感覚機能が発達するような脳の可塑

5:×身体を揺するなどの自己刺激的な行動をとるのは、外界からの刺激が少なすぎるためにおこる自己刺激ではないかと言われています。従って間違い


問題44 認知症高齢者への対応に関する次の記述のうち、最も適切なものを一つ選びなさい。

1 誤ったことをした時は、間違った点を指摘し、反省を促す。
2 感情が不安定なので、日常生活面で心理的刺激の効果は望めない。
3 認知機能が低下することから、知的な作業は負担となるので避ける。
4 生活の場面で、出来ることを見つけて、支援する。
5 発症には、様々な原因があるが、原因の違いにより対応を変える必要はない。

解答 4
1:×

2:×

3:×

4:○

5:×
解説は必要ないと思いますが、認知症高齢者への対応について掲載しておきます。(介護百科より)
@親しみをこめて話しかけてあげましょう。

A否定をしてはいけません。

B言葉はひとつの行動ごとに伝えましょう。

Cせきたてずゆとりをもって。

D人との交流の機会を作ってあげましょう。

E残存能力を大切に。

F昔の遊びで情緒を安定させてあげましょう。

G日中に起こった出来事や環境の変化をチェックしましょう。

H臨機応変に、ゆとりをもって対応しましょう。

問題45 ピアジェ(Piaget,J)の思考の発達段階に関する次の記述のうち、年齢の低い方から高い方へ並べたものとして、正しいものを一つ選びなさい。

1 前操作的段階----→具体的操作段階----→感覚運動段階----→形式的操作段階
2 前操作的段階----→形式的操作段階----→具体的操作段階----→感覚運動段階
3 感覚運動段階----→具体的操作段階----→前操作的段階----→形式的操作段階
4 感覚運動段階----→前操作的段階----→形式的操作段階----→具体的操作段階
5 感覚運動段階----→前操作的段階----→具体的操作段階----→形式的操作段階

解答 5
1:×

2:×

3:×

4:×

5:○こんな問題がでるんですね〜過去問題では「ピアジェ(PiagetJ.)は,認識や思考の発達には,4つの段階があることを明らかにした。」という程度を覚えておけばよかったのですが、それを一歩踏み込んだ試験問題でした。・・Piaget4つの発達段階とその特徴 で彼は自分の3人の子どもを観察した結果に基づいて、子どもの知的発達は4つの段階を踏んで成立するという内容をまとめました。その4段階とは順に感覚運動的知能の段階、前操作的知能の段階、具体的操作の段階、形式的操作段階、具体的操作段階です。従って5が正解


問題46 ピア・カウンセリングの技法に関する次の記述のうち、適切なものに〇、適切でないものに×をつけた場合、その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A 相手に自分の体験を話す際は、「私の場合は」といった話し方をする。
B ピア・カウンセラーの役割は、仲間を指導することである。
C ねらいとして「感情開放」が取り入れられている。
D 「セッション」では、互いに対等の立場で交互に話し合う。

(組み合わせ)
  A B C D
1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ×
3 ○ × 〇 ○
4 × ○ × 〇
5 × × ○ ○

解答 3
A:○下記解説を参考にしてください。

B:×仲間を指導するということでは、ピアカウンセリングの基本である「対等の立場」でおいうことが欠落してしまいます。従って間違い

C:○下記解説を参考にしてください。

D:○下記解説を参考にしてください。
解説 ピア・カウンセリングとは

ピア・カウンセリングとは、同じような環境や悩みを持つ人たちが対等な立場で同じ仲間として行われるカウンセリングです。 経験を同じくする仲間からサポートされていると感じる場に居ることで、心が解放され効果的に援助しあえるという効果があります。

問題47  高齢者の認知機能の測定に関する次の記述のうち、最も適切なものを一つ選びなさい。

1 ビネー式知能検査は、65歳以上の知能を測定するのに適している検査である。
2 検断法は、老化に伴う個人の知能の変化を追跡するのに適している。
3 「MMSE」は、日常生活の様々な行動観察から知能を評価する検査である。
4 ウェクスラー式知能検査は、言語性と動作性の両面からの問題によって構成される検査である。
5 柄澤式「老人知能の臨床的判定基準」は、知能の低下を言語面から測定・判断する検査である。

 

(注)「MMSE」とは、ミニ・メンタル・ステイト検査(Mini−Mental State Examination)のことである。

解答 4
1:×ビネー式知能検査は、普通教育の授業についていけない学業不振児童(精神遅滞・精神薄弱の児童)を判別する為の客観的な知能測定法でした。

2:×解説保留*****************************************************************************************************************

3:×認知機能検査)は、認知機能や記憶力を簡便に測定できる11の項目からなる検査です。言語性と動作性の両面でみるものではありません。

4:○その通りです。ウェクスラー式知能検査は、言語性と動作性の両面からの問題によって構成される検査で成人用と子供用があります。

5:×柄澤式「老人知能の臨床的判定基準」は対象者の日常生活 から知能レベルを測定するものであり、情報源は家族など対象者の日常をよく知っている人である。問題文にあるように知能の低下を言語面から測定・判断する検査である…というのが間違い


問題48 パーキンソン病によって起きやすい心理的影響に関する次の記述のうち、適切なものに〇、適切でないものに×をつけた場合、その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。

A 病名を告知されると本人だけでなく家族も同様に不安にかられる。

B 今しかできないという焦る気持ちが強くなり、仕事や趣味に意欲的になる。
C 歩行中に突然歩けないと助けを求めるのは、一種の甘えの表現である。
D 「自分は役に立たなくなった」と感じて孤立感に陥る。

(組み合わせ)
  A B C D
1 ○ ○ × ×
2 ○ × ○ ×
3 ○ × × ○
4 × ○ ○ ×
5 × ○ × ○

解答 3
A:○

B:×パーキンソン病では気分が上がってこなかったり、将来への不安、意欲の低下などの症状がみられます。

C:×甘えの現象によるものではなく姿勢保持障害によるもです。:姿勢保持障害(立っている時に、前かがみで肘と膝を軽く曲げた姿勢になり、体をまっすぐに伸ばそうとすると、後ろへ倒れやすくなる。歩行は小刻みで次第に前のめりで早足となり、急に止まったり方向を変えることができずに前方に突進してしてしまう)

D:○その通りです。パーキンソン病では気分が上がってこなかったり、将来への不安、意欲の低下などの症状がみられます。



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