保健医療(ターミナルケア)

 

@ターミナルケアと支援

・ターミナルケアとは、病気などで余命がわずかになった方に行う医療的ケアのこと。苦痛を緩和しながら、できるだけ生活の質(QOL=クオリティ・オブ・ライフ)を保つための医療や看護の方法です。

・ターミナルケアでは基本的に延命措置を行わず、痛みや不快な症状の緩和ケアが中心となります。身体・精神的ともに苦痛を伴わないよう、本人らしく生きられるようにサポートしながら、人生の最期を迎えられるように行われるものです。

 

A尊厳の重視と意思決定の支援

・リビングウイル→「平穏死」「自然死」を望む方々が、自分の意思を元気なうちに記しておく。それがリビングウイル(LW)です。

・介護職などによる代弁支援→・リビングウイルを聴取できないときは、その人らしい生き方ができるように支援

・コンセンサス・ベースト・アプローチ→終末期の治療の意思決定が代理人や他の近親. の家族、医師やケアに関わる人間の対話に基づ. くコンセンサスの形成過程によってなされる. ことをコンセンサス・ベースド・アプローチという。

 

Bターミナルケアの方法

・食欲が落ちる→ 食べたいものを、食べたいときに食べたい分だけを心掛ける

・口腔・嚥下機能低下→ 誤嚥性肺炎の予防や誤嚥しにくい食形態の工夫

・活動量の低下→ 無理のない範囲で好きな活動を続ける

・体調の悪化→ 無理のない範囲で好きな活動を続ける

・褥瘡ができやすくなる→ 予防ケア

 

C臨終が近づいた時の症状や兆候とケア

・死亡前1週間以内

1)トイレに行けなくなる

2)水分が飲めなくなる

3)発語が減ってくる

4)見かけが急激に弱ってくる

5)目の勢いがなくなってくる(注視能力の低下)

6)原因の特定しにくい意識障害・傾眠傾向が出現してくる

・死亡前48時間以内

1)1日中、反応が少なくなってくる

2)脈拍の緊張が弱くなり、確認が難しくなってくる

3)血圧が低下してくる

4)手足が冷たくなってくる

5)手足にチアノーゼが認められる

6)冷汗が出現する

7)顔の相が変わる(顔色が変わる)

8)唾液や分泌物が咽頭や喉頭に貯留し、呼気時にごろごろと不快な音が出現する(死前喘鳴)

9)身の置き所がないかのように、手足や顔などをバタバタさせるようになる

 

D死後のケアと死亡診断

家族が最後の時間を過ごした後、遺体を清潔にし、生前の外観をできるだけ保ち、死によって起こる変化を目立たないようにするための処置をいう。 (エンゼルケア)

遺族に対する配慮、対応のことをグリーフケアという

1体内に残っている排泄物を手で圧迫するなどして体外に排出させる。

2全身の清拭をし、創があるときには包帯交換をする。

3分泌物等の流出がないよう鼻腔・口腔・耳・肛門などに綿を入れる。

4結髪、ひげそり、薄化粧などを行い、顔を整える。

5家族と相談して、死の旅立ちに相応しい衣類に交換する。

 

死後診断

主治医に死亡診断書の作成を依頼(死亡診断書は医師のみが作成できる)

 

ターミナルケアに関する過去問題をピックアップ

1 医師は死亡診断書を交付することができる

〇死亡診断書の交付は、医師(歯科医師を含む)にのみできる行為である。

2 看護師は死亡診断書を交付することができる

×

3 介護支援専門員は死亡診断書を交付することができる

×

4 歯科医師は死亡診断書を交付することができる

〇死亡診断書の交付は、医師(歯科医師を含む)にのみできる行為である。

5 介護福祉士は死亡診断書を交付することができる

×

6 若年者と比較して、高齢者ではがんによる痛みの訴えが多くなる。

×国立がん研究センターの調査では、がん患者の外来患者では、痛みがある場合、若年者の方が正確に痛みを訴え、痛みを取り除く治療を受けている割合が高かった。それに対し、高齢者は痛みがあるにも関わらず、治療を受けていないことがわかっている

7 BPSD(認知症の行動・心理症状)には、がん性疼痛が原因のこともある。

8 小規模多機能型居宅介護では、ターミナルケアは提供できない。

×地域包括ケアシステムにおいて、小規模多機能型居宅介護はターミナルケアを提供する重要な拠点と位置付けられているし、ターミナルケアを実践する各小規模多機能型居宅介護事業所をバックアップするため、一定の要件を満たせば看取り連携体制加算を算定できる。

9 介護老人保健施設入所者に対するがんの治療は、医療保険の適用について制限を受けない。

×介護老人保健施設で行える医療行為には制限があり、投薬等にも制限がある。例えば抗がん剤は介護老人保健施設で投薬はできるが、抗がん剤には分類されないがん骨転移に対する製剤などは介護老人保健施設では医療保険の適用にはならず、一般的には使用できない。そういう意味では、介護老人保健施設入所者に対するがんの治療は医療保険の適用について制限を受ける。

10 死後のケアであるエンゼルケアは、遺族のグリーフケアとしても意味がある。

〇エンゼルケアとは身体を清潔にし、その人らしい外見に整えるためのもの

11 終末期では呼吸困難や疼痛に対しては、投薬のほか、安楽な体位やマッサージなどで苦痛の緩和を図る。

12 終末期では食事については、楽しみや満足感よりも、摂取量や栄養バランスを優先する。

×食事においては、摂取量や栄養バランスも大切であるが、終末期のケアにおいてはQOLの向上という点においても食事の楽しみや満足感を大切にすることが重要である。

13 終末期では緩和ケアは、在宅では行われない。

×緩和ケアは、在宅で行われる場合もある。

14 終末期においては要介護認定の前でも、保険者が必要があると認めた場合には、暫定ケアプランを作成して介護サービスを利用することができる。

〇要介護認定申請を行っていれば、決定された認定は申請日に遡って有効となるため暫定プランを作成した上でサービスを利用することは可能である。

15 臨死期において、肩や顎だけが動き、喘いでいるように見えるのは、呼吸停止に至る一連の動きである。

〇死が近づくと、口をあけ喘ぐような呼吸(下顎呼吸)が起こり、浅くゆっくりとした呼吸と早く深い呼吸を繰り返し、呼吸が浅くなった時点で呼吸停止を挟む呼吸(チェーンストークス呼吸)となり、最終的に呼吸停止に至る。

16 臨終が近づいたときは、応答がなくなっても、最後まで語りかけ、最期を看取るようにする。

〇臨終が近づいた場合でも、聴覚は最期まで保たれるため、家族等による語りかけが大切である。

17 独居の高齢者については、本人が希望しても、在宅での看取りを行うべきではない。

×終末期ケアにおいては、本人の自己決定が尊重され、独居の高齢者であっても、ケア体制を整えれば在宅での看取りは可能である。

18 看取りの方針を決めた場合には、家族の意向が変わっても、その方針は変更しない。

×一度看取りの方針を決定しても、それに固執せず、本人及び家族の意向に沿って柔軟に変更することも必要である。

19 末期がん患者の疼痛緩和には、第一段階としてオピオイド鎮痛薬を用いる。

×WHOの除痛ラダーに従うと、末期がん患者の疼痛緩和においては、第一段階としてアスピリンやアセトアミノフェンなどの非オピオイド鎮痛薬からはじめ、除痛が十分でない場合には、弱オピオイド、強オピオイド鎮痛薬を用いる。

20 介護老人福祉施設において、入所者又は家族の同意を得て、医師、看護師、介護職員等が共同して看取りの支援を行った場合には、看取り介護加算を算定できる。

〇死亡日及び死亡日前30日以内に看取り介護を実施した場合には、所定単位数を算定出来る。

21 終末期医療では、医師等の医療従事者による適切な情報提供と説明が求められるが、この適切な情報には、療養場所やこれからの過ごし方の選択肢も含まれる。

〇終末期医療では、医療面の支援だけでなく、生活を支えるケアも必要がある。

22 末期がん療養者は、退院時に起居動作ができたとしても、短期間でADLの低下など状態の悪化が予測されるため、介護ベッドの早期導入を計画する。

〇介護保険では、病状の進行が早い末期がん患者に配慮する必要があると判断し、短期間のうちに起きあがりや寝返りが困難になるとみられる対象者について、医師らが必要と判断した場合は、要介2護度に関係なく(軽度者であっても利用制限なく)、市町村の判断で福祉用具貸与サービスを利用できる。

23 終末期にある療養者の家族に対する予期悲嘆への援助では、積極的に励ます必要がある。

×家族の予期悲嘆への援助では、家族の感情表出を傾聴し、共感することが大切である。様々な感情を受け止めつつ、家族が少しずつ死を受け止めていけるよう、見守り続けることも重要である。

24 末期がん療養者やその家族が在宅での看取りを決断した場合には、入院という選択肢を情報提供する必要はない。

×在宅での症状緩和が難しい場合には、在宅ケアに固執することなく、一時的に施設への入院も検討するため、情報提供は必要である。

25 終末期においてリハビリテーションを行うことは、療養者のADLの維持、改善により、可能な限り高いQOLを保つとともに、痛みや苦痛を和らげることにもつながる。

〇終末期におけるリハビリテーションでは、苦痛を取り除きながら、最後まで人間らしくあるよう人格を尊重したケアを行う。

26 終末期においては、嚥下機能が低下し肺炎を起こしやすいので、口腔ケアは控える。

×終末期においては嚥下機能の低下により口腔内は非常に汚れやすくなるため、誤嚥性肺炎を予防するためにも積極的な口腔ケアが必要となる。

27 臨死期にある人に、氷、アイスクリームなどを口に含ませることは避けなければならない。

×誤飲に気をつけながら行う

28 ターミナルケアでは、本人の人生観や生命観などの情報は、関係者で共有すべきではない。

×共有すべきである。

29 リビングウィルとは、本人の意思が明確なうちに、医療やケアに関する選択を本人が表明しておくことをいう。

30 重度の認知機能障害などを有する利用者の場合に、家族に加えて複数の医療・介護専門職が集まって方針を決める方法をコンセンサス・ベースト・アプローチという。

31 ターミナルケアでは、医学的観点だけに基づく医療方針の決定では、本人の意向に反する結果となるおそれがある。

32 介護保険の特定施設では、ターミナルケアは提供されない。

×看取り介護加算を算定できる事業者は次の通りです。

@特別養護老人ホーム(地域密着型施設を含む)

Aグループホーム

B特定施設入居者生活介護(地域密着型施設を含む)

33 臨死期のケアでは急変時の対応は、そのときに考えればよい。

急変時を想定してどのような医療・介護が必要か決めておく。また家族等への24時間連絡体制を確立しておく

34 臨死期では呼吸をするたびに、喉元でゴロゴロと音がする状態 (死前喘鳴) になることがある。

inserted by FC2 system